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じもラブ Vol.06 五条ヶ丘活性化推進協議会

アニメ「ゆるキャン△」の舞台ともなっている身延町常盤周辺で、町と地域が元気になるようにと活動している五条ヶ丘活性化推進協議会。五条ヶ丘は、かつて下部小学校と下部中学校があった小高い丘の名前です。初の2週続きのイベント「本栖高校文化祭2022」の会場で、立ち

​アニメ「ゆるキャン△」の舞台ともなっている身延町常葉周辺で、町と地域が元気になるようにと活動している五条ヶ丘活性化推進協議会。五条ヶ丘は、かつて下部小学校と下部中学校があった小高い丘の名前です。初の2週続きのイベント「本栖高校文化祭2022」の会場で、立ち上げから中心となって活動してきた3名にお聞きした話には、随所に身延愛が溢れていました。

きっかけは「ゆるキャン△」

前会長で現在庶務を務める深山さん深山:2018年1月にアニメ「ゆるキャン△」の放送が始まってしばらくした頃、第一話で登場する本栖湖 浩庵の赤池さんから、『最近、ゆるキャン△ファンの来訪が増えている。本栖高校(ゆるキャン△に登場する主人公達が通う学校。旧下部小学校・旧下部中学校がモデルとされる)にもたくさんの人が行くだろうから、受け入れの準備をしてはどうか』と、電話をもらいました。この辺りは過疎化と高齢化が進む地域です。そんな場所に若い人が来てくれるのはとても嬉しいことですし、同年4月21日からの「ゆるキャン△デジタルスタンプラリー」開催もすでに決まっていましたので、日ごろ懇意にしている方々に声をかけ、受け皿となるべく協議会を立ち上げることにしました。

 

 

 

 

会長の小林さんと事務局長の依田さん​小林:その時に連絡をもらった1人が私です。確か2018年の3月くらいでしたか、深山さんから、「こんなアニメがあるんだけれど、知っている?」と。そういえば確かに最近見慣れない若い人達が、まちを歩いたり写真を取ったりしているなぁと、すぐに思い当たりました。そして、そういう人達にもっと楽しんでもらえるように、何かちょっとしたことでいいからやってみないかという話を聞き、それはおもしろそうだと参加することに。知り合いにも声をかけ、結局、下部中学校の卒業生を中心に、この辺りに何らかの縁がある人が20名ほど集まって、4月に五条ヶ丘活性化推進協議会が発足しました。

依田:メンバーには、公務員もいれば、住職、自営業、医療関係者などもいて、職業はバラバラ。町外に住む人も、町内に住みながら町外に働きに行っている人もいるので、頻繁に参加できるのは半分程度でしょうか。ちなみに私も常葉地区に住んでいますが、勤務先は甲府です。
ゆるキャン△をきっかけに始まった活動ですが、立ち上げ時の共通認識として、地域が元気になるように、例えゆるキャン△が無くなっても続けていける活動をしていこうということがあります。私は、地域や町が良くなるのであればぜひ力を尽くしたいと考えて参加したのですが、多くのメンバーが同じような想いだったと思います。

 

最初の活動は、看板の設置

小林:実際にゆるキャン△で大勢の人が来るようになったのですが、皆さん初めての場所なので、甲斐常葉駅から学校までの通学路を、うつむいて地図やスマホを見ながら歩いているんですね。そうなるとこちらとしても挨拶もできないので、まずは、顔を上げて歩けるように甲斐常葉駅から本栖高校までの案内看板を作ろうということになりました。看板には原風景に関連するアニメの場面を掲載して、見比べ楽しみながら歩いてもらおうと。そうしたら、「この看板はいくつあるんですか?」とか、「どこにあるんですか?」という問い合わせが来るようになったので、手書きで地図を作り、地元商店街や駅前に置くようにしました。現在の地図は15版目。これまでにのべ5万枚を配布しました。初めの頃から見ると、地域情報を入れるなど内容も充実してきています。

 

案内看板の設置

 

深山:この活動には、看板を通して地域の人にもゆるキャン△を知ってもらい、新しい訪問者を受け入れてもらえる下地を作っていこうという思惑もありました。いくら「ゆるキャン△の人が来るから良くしてあげてね」と言ってもなかなか伝わらないけれど、看板があると地域の人達にも興味を持ってもらえたり、「本栖高校ってできたの?」と話題になったりするので、「ゆるキャン△っていうアニメがあって、この辺りが舞台になっているんですよ」と話せますから。
それから、地域の人達には、見慣れない若い人を見かけたら、「ゆるキャン△ですか?」「どこから来たんですか」「これからどこへ行くんですか」という3つの話しかけをお願いしました。「こんにちは」では会話が続きませんが、「ゆるキャン△ですか?」なら相手も応えやすいですよね。さらに、「どこから来たんですか?」と聞けば、多くは県外からなので、そこから何かしらの話ができる。「これからどこへ行くんですか?」と聞けば、何かしらの情報を伝えることもできる。そんなことをしていたら、80~90歳のおじいさんおばあさんから「ゆるキャン△ですか?」と話しかけたことに驚いたファンの方がSNSで発信してくれるようになり、そこから広がって、さらに多くの方が来てくれるようになりました。

 

活動の様子

 

依田:深山さんが、住職を務める常幸院の駐車場とトイレを解放してくれたのも大きかったですよね。最初の頃は地域の人達にゆるキャン△が認知されていなかったので、見慣れない人が来ていると、路上駐車をされるんじゃないかなどと疑心暗鬼もあったと思うんです。でも、ファンの方々が安心して来られるような取り組みをしつつ、私達自身もファンの方達を見かけると声をかけ、会話するようにしているうちに、段々と地域のおじいちゃんやおばあちゃんも受け入れてくれるようになっていった。地域全体で、ゆるキャン△ファンをもてなすムードが醸成されて行ったように感じます。
そういえば、ファンの人たちは何を望んでいるのだろうかということで、オフ会のようなこともしましたよね?

小林:あれは、2018年の6月でしたね。そうしたら、本栖高校でキャンプがしたいという声が多くて。ただ、町の持ち物だし、もう廃校になった学校なので水道やトイレといった設備が使えるかもわからない。本当にできるのかな?ということで、役場にも協力してもらいながら自分達でキャンプをしてみて、これなら大丈夫、できるねということで始めたのが、今の校庭キャンプです。

 

校庭キャンプ

 

深山:実は、校庭キャンプには廃校利用という側面もあるんですよ。廃校反対運動があったくらいこの地域にとって小学校や中学校は大事な場所でしたし、学校が無くなってからは、子どもの声が聞こえなくてさみしいと言った声も少なからずありましたから。メンバーのほとんどはこの学校の出身なので、母校が無くなってしまったことはすごくさみしいことだけれど、イベントをすることによってまたたくさんの人が集まって盛り上げていけるという思いも強かったようです。私は卒業生ではないけれど、そういう思いはメンバーから伝わってくるし、それが活動のモチベーションにつながっているようにも感じています。

 

定期的に開催する校庭キャンプと、
年に1回程度の学校開放が現在の活動の中心

小林:初期の頃は、アニメの制作会社とも協力しながらゆるキャン△を前面に出したイベントが多かったですね。初めて一般の方に参加してもらった校庭キャンプも、交流しながら皆でゆるキャン△メンバーの誕生日を祝う「誕生日会キャンプ」でしたし、2018年11月には、第一回本栖高校学園祭も開催しました。メインイベントは、主題歌を歌う佐々木恵梨さんや亜咲花さんも参加されてのアコースティックライブ「秘密結社ブランケット音楽祭」で、当日は約800名が集まる大きなイベントになりました。
ただ、私達としては、ゆるキャン△ファンに限らず広く楽しんで欲しいとの思いもあるので、少しずつゆるキャン△色を抑えるようになっていて、最近は「校庭キャンプ」の名称で開催することも増えています。定期的に120組を上限にSNSで参加者を募集しているのですが、それでも告知から1~2日でいっぱいになってしまいます。これまで25~26回やって、キャンプの参加者は5000人を超えました。

 

キャンプファイヤー

 

依田: キャンプでは毎回キャンプファイヤーをやっているのですが、それも好評ですね。火を見ると心が癒されるし、インスタ映えもしますから。安全面に配慮しつつ、できるだけ盛り上がれるよう盛大に燃やしています。素人の集団だから難しいことはできないけれど、参加してくれた人には楽しんでもらいたいし、来て良かったなと思ってもらいたいですから。
ここは過疎地で、普段は人の姿すらあまり見ないような所です。地元の人にしてみると、たくさんの人が来てくれて賑わうなんて夢のような感じで、地域の方々からも地域活性化をやってくれてありがとうと感謝されることが多いです。
私達としても橋渡し役になれたらいいなという思いで、まずはやってみて、反省会をして出てきた課題を改善するという繰り返しでやってきました。基本的にボランティアで、発電機や延長コードといった必要な機材を所有するメンバーが無償で提供するなど、みんなで知恵も備品も出し合って手作りでやっています。

深山:アニメでは通学路や校庭だけでしたが、実写版では校舎内で撮影が行われ、ロケセットを残すよう町が要望してくれました。実写版の人気により、ここがゆるキャン△の学校だという認識もさらに広がったので、年に1回程度は、校舎を解放してロケセットを見てもらおうという企画も始めました。
今回は「本栖高校文化祭2022」と銘打ってのキャンプと学校開放ですが、2週連続は初めての試みです。文化祭だから、飲食や物品販売があった方が楽しいよねということで地元や卒業生を中心に募ったところ、40近くの出店をいただきました。カルタ大会や西嶋和紙の手漉き体験など参加型のイベントもあり、子ども達も含め地域の方々にも楽しんで頂けるイベントになったのではないかと思います。

 

ロケセット

 

依田:告知に関しても、通常はSNSのみのところ、今回はチラシを作って新聞に折り込んだりポスティングしたりして、広く告知しました。来場者は4日間で2000人以上になる見込みです。今回キャンプの方は160組ですから、非常に多くの人が遊びに来てくれたことになります。私達としては、町外はもちろん町内の方にも来ていただき楽しんでもらえたらと思っているので、今回は町内からも多くの方が来てくれてよかったなと思っています。やっぱり大勢の人が来てくれて賑わうとワクワクするし、大きな励みにもなりますから。

無理せず自分達も楽しみながら、
活動を続けていきたい

小林:普段の連絡はSNSが中心で、実際に集まるのは月1回程度ですね。イベントも、他の活動も、メンバーそれぞれが、本業とリンクさせたり得意分野を活かしたりしつつできることをやっていくということで、なんとなくうまく回っているという感じです。無理をしないで、自分達も楽しむ。それが活動を長続きさせるコツかもしれません。
私は高校卒業後に一旦外へ出ましたが、その後家業に従事し、以来ずっとここで生きてきました。地域とのつながりが希薄になるなか、こうやってゆるキャン△をきっかけに新しい仲間ができたことで、楽しいだけでなく、人とのつながりのおかげで暮らしやすくなったし、地域全体も明るくなって、以前よりみんな生き生きしているようにも感じます。私たちの活動をきっかけに今後さらに常葉地区や身延町の認知が広がり、ゆるキャン△を知らない人にとっても、この地域が、自然や空気を感じて心が癒される場所になっていってくれたら嬉しいですね。

 

協議会メンバー

 

依田:活動を通して、同世代の新しい仲間ができ一緒に何かできるのはもちろん、ゆるキャン△ファンの人、地域の人、一般の人など、いろんな人とつながる楽しさを実感しています。その関係を通して、「身延いいね」と思って下さったり実際に来て下さったりと、目に見える活性化の姿もあるので、やりがいも大きいですね。
私の同級生は35人いるのですが、ほとんどが町外に出ています。それぞれ事情があってのことですが、地元が活性化すれば嬉しくて、こういう機会に帰ってきてくれるんですね。だから、私としてはそういう思いの受け皿になれるように頑張りたいし、自分達の活動が何かのきっかけになれば嬉しいなとも思います。
それから、自分達も楽しむという事も大事にしていきたいです。仕事との両立には大変な面もありますが、こういう活動が日常生活にまた違った豊かさを与えてくれていると思うので。
ここは本当に何もなくて、美味しい空気と自然があるだけ。最初の頃は、本当にできるのかなと思ったこともありましたけれど、一つひとつ実現し、つながっていくことによって、4日間で2000人以上もの人に来てもらえるようになった。これからも信じて続けていきたいですね。

深山:協議会では、ゆるキャン△だけでなく、道路の清掃活動をしたり、地域の情報を発信したり…、例えば、「ホタル観賞キャンプ」や「神輿担ぎキャンプ」のような、地域の風物や行事を一緒に楽しんでもらえるような企画を考え実施してきました。今回の文化祭も、清掃や片付けにボランティアを募っています。これからも、いろんな人を巻き込んでイベントをすることで、交流人口を増やし、地域に賑わいを生んで行きたいと思っています。
また、今も、焼き芋大会や花火大会などを、校庭に地域の子ども達を集めてやっていますが、今後も、地域の子ども達がここを好きになるような楽しいイベントを増やしていきたいと思っています。彼らが大きくなって町の外に出て行ってしまったとしても、あの頃校庭で、焼き芋や花火をやって楽しかったなと何かのきっかけで思い出し、故郷を想う気持ちを忘れないでいてくれたら嬉しいですね。

 

協議会の活動

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